研究ハイライト

アクチノイド物質科学研究部門の研究

〜電子の対を自在に制御〜 磁場と相性の良い超伝導のメカニズムを解明

東北大学金属材料研究所の青木大教授は、CEA-Grenoble(フランス原子力庁)の研究員ジャンパスカル・ブリゾン(Jean-Pascal Brison)、博士学生ベイルン・ウ(Beilun Wu)らとともに、ウラン化合物強磁性体UCoGeの超伝導発現機構を解明しました。
 超伝導を担っている電子間の対の強さが、磁場とともに大きく変化し、磁場を加える方向によって強められたり弱められたりすることが分かりました。 その結果、特定の方向では、磁場によって超伝導が強化されるという、これまでの常識をくつがえす現象が起きていることが分かりました。
 本研究により新しいタイプの超伝導発現機構が明らかになったことで、今後さらに非従来型の超伝導体が見つかることが期待されます。また、磁場に強い超伝導材料が開発されることで、超伝導を利用した新たな製品開発につながることが期待されます。
 本研究の成果は、2017年2月23日(日本時間)付英科学誌「Nature Communications」に発表されました。
詳細1: プレスリリース本文
http://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20170221_02web.pdf
詳細2: Nature Communications ウェブサイト
http://www.nature.com/articles/ncomms14480

ウランを含む強磁性超伝導体のリフシッツ転移を発見

東北大学金属材料研究所の青木大教授、CEA-Grenoble(フランス原子力庁)のGeorg Knebel(ゲオルグ・クネベル)研究員らの研究グループは、CNRS(フランス国立科学研究センター)と共同で、リフシッツ転移という特殊な「転移」をウラン化合物の強磁性超伝導体UCoGeで発見しました。
 通常、強磁性と超伝導はお互いに相反する物理現象です。UCoGeは、この常識に反して両者が共存します。さらに磁場によって超伝導が安定化するという不思議な現象を示します。このため、これまでとは異なる新しい超伝導発現機構が実現していると考えられています。
 本研究では、強磁性超伝導体UCoGeの純良単結晶を育成し、極低温、強磁場の極限環境下で磁気抵抗、ホール効果、熱電能を測定することにより、多段のリフシッツ転移が起きていることを明らかにしました。リフシッツ転移とは、フェルミ面のトポロジー変化をともなう特殊な「転移」です。本研究では、 精密物性測定により量子振動の観測に成功し、フェルミ面が磁場とともに次々に変化していることを突き止めました。これにより、非従来型の超伝導発現機構解明につながるものと考えられます。
本成果は、米国科学誌「Physical Review Letters」に、2016年11月9日オンライン公開されました。
詳細(Physical Review Lettersホームページ)
http://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.117.206401


上図:強磁性超伝導体UCoGeの熱電能の量子振動
下図:磁場によるリフシッツ転移を示す模式図

ウラン化合物の強磁場スピン密度波相を発見
−30年来の謎に強磁場中性子回折が回答をもたらす−

東北大学金属材料研究所の青木大教授、野尻浩之教授は、CNRS(フランス国立科学研究センター)のウィリアム・クナフォ研究員(William Knafo)、CEA-Grenoble(フランス原子力庁)、茨城大学の研究者らとともに、ウラン化合物 URu2Si2の「隠れた秩序」※1に近接する強磁場中の磁気相がスピン密度波※2を形成していることを世界で初めて発見しました。
きわめて短い時間に強磁場を発生しながら中性子散乱を行うという、高度な実験技術の組み合わせによって初めて実現した実験です。30年来謎とされていたURu2Si2が示す正体不明の相転移※3「隠れた秩序」の解明につながる他、強磁場中の新奇な量子相の発見にもつながるものと期待されます。
  本研究の成果は、2016年10月20日付英科学誌「Nature Communications」で発表されました。また2016年11月18日付の科学新聞に掲載されました。
詳細1: プレスリリース本文 [PDF:320KB]
詳細2: Nature Communications ウェブサイト [DOI:10.1038/ncomms13075]


ウラン化合物の磁場誘起超伝導の謎に迫る

東北大学金属材料研究所の青木大教授、CEA-Grenoble(フランス原子力庁)のAlexandre Pourret研究員らの研究グループは、CNRS(フランス国立科学研究センター)と共同で、強磁性超伝導体URhGeの磁場誘起(リエントラント)超伝導とフェルミ面の不安定性および強磁性ゆらぎの関係を解明しました。
 純良単結晶を用いて、物質の状態密度の変化に敏感な熱電能を極低温・強磁場の極限環境下で測定することにより、磁場誘起超伝導近傍で(1)強磁性が通常の2次転移から1次転移に切り替わること、(2)それに伴ってフェルミ面が顕著な変貌を遂げることが分かりました。
フェルミ面の不安定性と超伝導の関係を明らかにした今回の研究成果は、セリウム化合物の重い電子系超伝導体や高温超伝導体の超伝導発現機構解明にもつながるものと考えられます。
本成果は、米国科学誌「Physical Review Letters」に、2016年7月22日オンライン公開されました。 詳細(Physical Review Lettersホームページ)
http://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.117.046401

  左図:熱電能測定により決定されたURhGeの相図と三重臨界点(TCP)。
  右図:強磁場で観測された量子振動現象。

ウラン化合物超伝導体の超伝導ギャップ構造を決定

東北大学金属材料研究所の清水悠晴助教、青木大教授は、橘高俊一郎助教・榊原俊郎教授(東京大学物性研究所)、町田一成教授(立命館大)らとともに、磁性と超伝導が共存する典型物質UPd2Al3において、超伝導のギャップ構造を精密熱力学量測定によって初めて明らかにしました。  ウランの5f電子が強い相関を示す、いわゆる重い電子系ウラン化合物には、エキゾチックな超伝導体が多数知られています。この超伝導は従来型のフォノンを媒介とする超伝導とは全く異なる新奇な超伝導発現機構を持っていると考えられています。
しかし、そのメカニズムが実験的に明らかにされた例はあまりなく、その解明は現代固体物理学における挑戦的課題のひとつとなっています。
 この研究では、磁性と超伝導の共存を起こす重い電子ウラン系超伝導体UPd2Al3純良単結晶を育成し、その超伝導相内(Tc=2K)で高精度角度分解比熱測定(最低温度: 0.12K)を行いました。
その結果、水平ラインノード(超伝導ギャップがゼロとなる部分)をもつ超伝導ギャップが重い電子バンドに存在していることを実験的に明らかにしました。さらにその準粒子励起構造が理論計算によってよく再現されることがわかりました。超伝導ギャップ構造はクーパー対の引力相互作用を反映するため、この結果は今後ウラン系超伝導の発現機構を解明する重要な手がかりにつながると考えられます。
 本研究の成果は、米国科学誌「Physical Review Letters」に掲載される予定です。

  図.六方晶の結晶構造(左図上)を持つ重い電子系反強磁性超伝導体UPd2Al3における極低温比熱の温度依存性(左図下)、および超伝導状態における各磁場下での比熱の極角(θ)依存性。超伝導ギャップ構造を反映した比熱振動が観測された。

強磁場で変わる「金属の顔」

東北大学金属材料研究所の青木大教授、フランス国立科学研究センター(CNRS)のIlya Sheikin研究員は、フランス原子力庁(CEA-Grenoble)、オランダ強磁場研究所(HFML-EMFL)と共同で、重い電子系超伝導体CeIrIn5のフェルミ面が強磁場中で突然消失することを発見しました。フェルミ面は「金属の顔」とも呼ばれ、金属の性質を支配する重要な物理量です。CeIrIn5の純良単結晶を育成し、磁気トルク、熱電能を精密測定して、その量子振動を強磁場、極低温下で観測しました。その結果、フェルミ面が30テスラ(地磁気の約100万倍)で大きく変貌していることが分かりました。これは、磁場で誘起されたリフシッツ転移と呼ばれる現象です。この成果により、強磁場中でのエキゾチックな新量子相発見につながることが期待されます。
本成果は、米国科学誌「Physical Review Letter」に、2016年1月22日オンライン公開されました。
詳細(Physical Review Letterホームページ)
http://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.116.037202

量子臨界点近傍のフェルミ面の変化を精密熱電能測定で解明

東北大学金属材料研究所の青木大教授とCEA-Grenoble(フランス原子力庁)のA. Pourret研究員らの研究グループは、CNRS(フランス国立科学研究センター)、理化学研究所と共同で、重い電子系反強磁性体CeRh2Si2の極限環境下におけるフェルミ面の変化を明らかにしました。強磁場、高圧下で純良単結晶CeRh2Si2の熱電能を精密測定することにより、(1)反強磁性状態で観測されていた熱電能量子振動が臨界磁場で突然消失すること、(2)高圧の反強磁性臨界圧で、熱電能の値が符号反転をともなって著しく変化することがわかりました。反強磁性量子臨界点近傍でのフェルミ面の不安定性を示しており、重い電子系の量子臨界現象の理解が格段に進むことが期待されます。
 本成果は、米国科学誌「Physical Review B」の注目論文(Editors’ Suggestion)として、2015年6月15日オンライン公開されました。
詳細(Physical Review Bホームページ)
http://journals.aps.org/prb/abstract/10.1103/PhysRevB.91.245129

  CeRh2Si2の強磁場下における熱電能量子振動効果

磁場で再出現する超伝導−そのメカニズムを強磁性ウラン化合物で解明

徳永陽(日本原子力研究開発機構先端基礎研究センター・研究主幹)、青木大(東北大学金属材料研究所・教授)らはCNRS(フランス国立科学研究センター)、CEA(フランス原子力庁)、岡山大学と共同で強磁性ウラン化合物URhGeの磁場誘起超伝導の発現メカニズムを世界で初めて明らかにしました。NMR(核磁気共鳴)による精密物性測定により、磁場中で強磁性揺らぎが著しく発達しており、これが強磁場中での超伝導の発現を促していることがわかりました。本研究成果はPhys.Rev.Lett.の注目論文(Editors' suggestion)として2015年5月27日に掲載されました。

詳細(Phys.Rev.Lett.ホームページ)
http://journals.aps.org/prl/abstract/10.1103/PhysRevLett.114.216401
世界最速、極低温冷凍機の開発

青木大教授の研究グループと日本カンタム・デザイン株式会社は、室温から絶対零度近くの極低温(0.1ケルビン、-273゜c)まで、世界最速で冷却できる物性測定用冷凍機(ADR、断熱消磁冷凍機)を共同で開発しました。通常の冷凍機とは異なり、磁気を用いて冷却する方法であり、従来の50〜100倍の冷却速度です。低温寒剤であるヘリウム資源の枯渇が叫ばれる中、簡便、安価に極低温を得る冷凍機として今後多くの需要が見込まれます。また、極低温を短時間で得られることで、新奇超伝導体の物質開発、磁性材料の開発などにつながるものと期待されます。

※この成果は日本経済新聞、河北新報などで報道されました。
超伝導内部で不思議な磁気秩序を発見

青木大教授とCEA-Grenoble(フランス原子力庁)のS. Raymond研究員らの研究グループは、希土類元素を含む重い電子系化合物において、超伝導の内部で奇妙な磁気秩序を発見しました。「Q相」と呼ばれる特殊な磁気秩序状態であり、異方的な超伝導ギャップと深い関わりがあることが分かりました。磁性が絡んだ超伝導発現機構の解明につながるものと期待されます。この成果は、1月31日付の科学新聞で報道されるとともに、日本物理学会英文誌J. Phys. Soc. Jpn.において「注目論文」として論文掲載されました。
 詳細は下記のページをご覧ください。

 http://www.imr-oarai.jp/results/img/aoki.pdf

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